マフラー

今年は早い時期からマフラーを見かけましたね。薄着にマフラーを巻いて、街中を颯爽と歩いている姿を見かけると、私の背筋も伸びます。

ギリシャの習慣にβολτα(ヴォルタ 散歩)があります。
初めてクレタ島の村に行った時、子供達が「ヴォルタに行こう」と誘ってくれ、村のメインストリートを往復したり、畑に下って花を摘んだりして、この言葉を覚えました。
といっても私の思っている散歩とは微妙に違うのがこのヴォルタでした。

d0042214_072068.jpg村では1日の仕事が終わると女性は家にこもり、男性はおしゃべりと軽い一杯のためにカフェニオンに繰り出します。他に娯楽のない田舎のこと、十代後半の男の子もカフェニオンに顔を出します。
私がお世話になっていた家はこのカフェニオンをやっていました。
ある晩、店から外を見ていると、アドニスとマノリスが歩いてきます。店に来るのかと思っていると、通り過ぎて行きました。この先には、何もありません。隣の村まで行くのかな、と思っていたら、戻って来てまた店の前を通り過ぎて行きました。
しばらくして、彼らは店に入ってきました。
そう、これがヴォルタ、ある場所を行ったり来たりすることでした。

アテネの青少年は、1日中、ぐだぐだして夕方になるとめかしこんで出かけていきます。
この場合は男の子も女の子も。日本のようにどこかに入ってしゃべったりもしますが、ヴォルタに疲れてちょっと入る感じかもしれないですね。
ヴォルタが社交や出会いの場になっていることもあるようで、夜の広場に集うおしゃれをした人々の姿をテレビで見たことがあります。

にぎやかな場所ならともかく、端から端まで1㌔もなければ、外灯もない村の道を往復する彼らは、律儀なのか、頑ななのか、なんだか修行してるみたいに見えました。
今ではアドニスもマノリスも都会で就職しています。この前村に行った時、すごい勢いの車に轢かれそうになり、にらみつけたらマノリスが笑ってました。やれやれ、これも成長段階の一つ、とあの日の彼らの伸びた背中を思い出しました。

このマフラーはアテネの友人が私の母にプレゼントしてくれました。一度、外で失くしたのにちゃんと帰ってきた律儀な良い子です。
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