薔薇

ギリシャ語には呼びかけの言葉が色々あります。
良く聞くのはπαιδι μου(ぺディームー my child)、αγαπη μου(アガーピムー my love)辺りでしょうか。
私の使っているギリシャ語のテキストにはχρυση μου(フリシームー my gold)と言うのもあります。これは古いかも。

相手と状況により、ねえ、ぐらいの軽さから、愛情のこもった場面まで使いわけています。恋人同士だともっと甘ーい表現をするのですが、残念ながら良く知らないので割愛。
お店などではκοπελα(コペラー お嬢さん)などと言われることもありますが、単なる呼びかけなので勘違いしないように。
クレタ島の友人達は質実剛健タイプが多いのか、こうした言葉を耳にする機会はあまりありませんでした。家族内でもあまり耳にしません。夫婦間でも相手の名前にムーmyをつけるぐらい。二人っきりの時は?知るすべもありません。

私自身、ギリシャ語が分からないから、こういう呼びかけをしてもらったのは1、2度。ちょっと寂しいな、なんて思っていました。

1月の旅行で、初めてのお宅を訪問する機会がありました。友人のお母様が一緒にご飯でも、と呼んでくれたのでした。
今までのお宅訪問は、友人に連れられてか、その家の主婦が知り合いでというパターンだったので気楽に行っていました。今回はさすがに緊張。主婦は家の要ですものね。

友人に連れられて、お家に入るとひと気がありません。
一体、どこにお母様が…。緊張が更に高まる中、しばらくして友人がキッチンからお母様と出てきました。
逆光だったので、両手を広げて近寄ってくるお母様は後光が射してるかの如くでした。
そして第一声、「κουκλακι μου!!」
この家の居間(サローニ)は今まで見たうちで一番広かったのですが、その端っこまで跳び下がりたい、いっそその先の窓から飛び降りたい気分に急上昇。
まさか、本当に後ずさりする訳にもいかず、ちゃんとご挨拶はしましたが…。
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κουκλα(クックラ お人形 お人形のように可愛い娘)にちゃん付けをしたような表現なのですが、深い意味はないと分かっていてもさすがに恥ずかしいものです。
こういう言葉に日々耐えているギリシャ人を一瞬尊敬してしまいました。
良く考えれば、子供のときからいわれ続けていれば、どうってことないんですよね。かえってこう言う表現をしてくれないと寂しかったりするのかも知れません。
お母様としては良く分からない日本人の名前が覚えられずにこう言っただけのことだったんでしょう。それでも…。
たまには言われてみたい、なんて分不相応、もう2度と言いません。

そんなスウィートなお母様に頂いたお土産、全長5センチほどの金属の薔薇(τριανταφυλλα 薔薇の複数形 トリアンダフィッラ)を見るたびに、未だに恥ずかしくなる私です。
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