山火事

さて、翌日は土曜日、帰りのバスはありません。
ま、タクシーでも呼んでもらって帰るさ、と、朝から数件のお宅訪問をこなし、お母さんのカフェニオンに戻りました。
これから向かいの友人Dの家に行くね、と言うと、お母さんは「Dの旦那が今日イラクリオンまで行くと言ってたから、乗せて行ってもらえるか、Dに頼んできなさい」と指示出し。
よし自力で交渉開始!!とDの家のドアをノックしました。
お決まりの挨拶をしたところでDが「どうやってイラクリオンに帰るの?」と訊いてきました。
待ってました!!「Dragon(Dの旦那さんの名前)がイラクリオンに行くって聞いたんだけど、連れてってもらえない?」とお願い。
「行くわよ、じゃ、訊いてみるね」とDは電話を掛け始めました。「いいって、でもあと20分で出るって」
「分かった、荷物取って来る!!」d0042214_22245445.jpg
このDは私が初めて村に行った時は小学生でした!!!超美少女なのに他の子に比べて控えめで働き者の彼女とはその後も村に行くたびに会い、15才の時には結婚が決まったと訊いてぶったまげた(失礼)のものでした。
高校卒業後、すぐに結婚し、彼女の世代では唯一村に残っている存在です。
今ではしっかり4人の子供の母親で、しょっちゅう、彼女のかん高い然り声が響いてきます。

旦那さんのDragonは、私がギリシャで一番、かっこいいいと思った男性でした。(注 私の好みはあまり当てにしないで下さい&今では随分恰幅良くなってしまいました…)
でも不愛想なのかシャイなのか、私は彼と挨拶以外、言葉を交わしたことがありません。ひょっとして嫌われてる?とか思いましたが、大体、嫌われるほど接触がなかったのです。

お母さんのところに戻って事情を話し、荷物を持って再度Dの家に行く途中のチーズ工場にDragonがいました。
通り過ぎてから、挨拶なしはまずいと思い、戻って覗くと彼が「θα σε παρω!!(君を連れてくよ)」と初めて声をかけてくれました。ちょっとときめいてしまった一瞬!!

しばらくDの子供たちと遊んでいると、電話が鳴りました。
「出発するって」Dに言われて、荷物を抱えて跳び出し、お母さんに挨拶もそこそこにDragonの車に乗り込みました。

バックミラーのない日本なら車検に通るはずのない車で、彼はイラクリオンにチーズを卸しに行きます。
正直、口数の少ない彼との1時間ちょっとの道程は心配。で、もっと口数の少ない私から次々に質問を浴びせてみました。
まずは選挙ネタ。彼はND支持でした。
「もし、PASOKが勝ったら、あなたの生活は変わる?」
「変わらないだろうな」
次は家族の話。子供の学校の話から。
「小学校はL村まで行くんでしょう?大変だね。中学は?」
「A村だ。でも高校(写真上)はうちの村にあるよ」
「あなたの子供達は皆可愛いね。Dもすごく素敵な女性だし…。私が初めてここに来た時、Dは小学生だったんだよ!!すっごくいい子だった」
苦笑しつつ「そう?」と応えるDragonに、思わず「あなたも素敵だよ」と言ってしまいました。彼は照れて笑ってるだけでした。
「あの頃、村にはたくさん子供がいた。でも皆、村を出ちゃったね」
「今、村で若い者がいるのは5家族しかいないんだ」
「深刻な問題だね。あなたはイラクリオンで暮らすことを考えないの?」
「考えないことはないよ。でも、イラクリオンでチーズ工場をやる敷地を探すのは大変だよ。お金もかかる。どうしようもないさ」
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彼はタバコに火をつけて、思い出したように私にもタバコを差し出しました。
「いらない。村の女の人はタバコを吸わないね」
「うーん、良く知らない。見えないところで吸ってるのかもね。Dは吸わないけど」
「この夏は山火事がすごかったみたいね」
「上の方でね。この辺は大丈夫だったよ。ちょっとした火が起きてもこの辺は低木ばかりだからすぐに消火できるんだ」
「でも乾燥してるから危険だよね」
そんな話をしながら、彼は吸い終わったタバコを消さずに窓から投げ捨てました。
だからぁ、山火事が起きるんだってば!!

短いような長いような1時間が過ぎ、「ありがとう」の私の言葉に笑顔でだけ応えたDragonらしい別れ方。
言葉が分からなくても気持ちは通じるけど、分かる方がもっと理解し合えるんだな、と確認した村でのひと時でした。
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by kranaA | 2007-10-08 22:31